2018 年ミレニアム技術賞は Tuomo Suntola 博士に。フィンランド物理学者のイノベーションが情報技術製品の製造・開発が可能に。

Report this content

フィンランド人物理学者 Tuomo Suntola博士の革新的な技術である原子層堆積法atomic layer deposition、以下ALDのおかげで、私たちは高性能のスマートフォン、コンピューターやソーシャルメディアを享受できているのです。 ALD技術はまた医学や持続可能なエネルギーにも応用されようとしています。Sauli Niinistöフィンランド共和国大統領は2018年5月22日にヘルシンキで第8回ミレニアム技術賞を授与しました。

隔年で授与される総額100万ユーロの ミレニアム技術賞Tuomo Suntola博士に授与されました。Suntola博士に賞をもたらしたALD(原子層堆積法)というイノベーションは、全世界で使われているナノスケール技術です。ALDはマイクロプロセッサーやデジタル記憶装置に用いられる極薄層状物質の製作に利用されています。この技術により、単原子層ごとに複雑な三次元構造を作ることができるのです。

ALDは汎用性がある技術で、多くのハイテク部門で非常に役に立っています。 ALD技術で作製した薄膜が使われた部品が使用されていない現代のコンピューターやスマートフォンは実質的に皆無です。たゆまず進化するALD技術のおかげで、IT機器は小型化・低価格化が進む一方、より高性能になっています。Suntola博士のイノベーションは、有名なムーアの法則が今日までその有効性を維持している重要な要因の一つで、法則に従って、マイクロチップはその価格が下がっているにもかかわらず、その性能は2年ごとに倍増しています。

マイクロプロセッサーやコンピューター記憶装置に必要な極薄の分離膜や伝導膜は、Tuomo Suntola博士が開発したALD技術なしでは製造不可能なのです。

「ALD法は、直接ユーザーには見えないけれども実は目に触れる機会の多い開発には必要不可欠な技術の典型例です。ALDはまた情報技術の所有権の民主化を進め、情報通信利用者の幅の拡大に貢献してきました」とミレニアム技術賞選考委員会の委員長を務めたフィンランド技術賞財団Päivi Törmä教授はコメントしています。


Tuomo Suntola博士による理論からイノベーションへの展開

Tuomo Suntola博士は1970年代に薄膜製造のためのALD技術と機器を開発し、その後国際特許を取得しました。これにより、薄膜の大規模工業生産が可能となりました。ALD技術の土台である基礎研究は、Valentin B. Aleskovsky教授(1912~2006年)とStanislav I. Koltsov教授(1931~2003年)により旧ソビエト連邦でも行われていました。

「Tuomo Suntola博士のイノベーションはALD法の大規模商用利用につながりました。博士はマイクロエレクトロニクスと情報技術の分野におけるADLと薄膜技術に秘められた大いなる可能性に気づいたのです」とミレニアム技術賞選考委員会Päivi Törmä委員長は述べています。

Suntola博士本人も、エレクトロニクスにおけるこの大発見を自身の最大の業績と思っています。

ミレニアム技術賞を受賞したTuomo Suntola博士によると、「2000年代初頭に半導体部門がALD技術の重要性を理解し始め、この技術利用は爆発的に広がっていった」のです。

「ミレニアム技術賞受賞は大変名誉なことです。特に人類の生活の質を向上させる非常に多くの応用分野でこのイノベーションが有用であると認められているからです。」


医学への新たな応用

受賞したイノベーションはIT部門で確固たる地位を確立しており、またその他の分野での将来性も期待されています。医療機器や移植組織のコーティングのためのALD薄膜製造についての研究では有望な結果が得られています。  人体内での制御放出などの応用分野において技術を商用化するため、新規事業が興されています。

ALD法を用いるとソーラーパネルやLEDライト、電気自動車用リチウム電池などの効率向上が可能で、環境に優しい包装材への応用も研究されています。ALD膜は光応用分野に用いられており、腐食防止のため腕時計やシルバージュエリーにも使われています。

今日ALD膜の製造に用いられる機器や化学物質の世界市場は約20億米ドルと推定されており、ALD技術が用いられている家庭用電化製品の市場価格は5,000億ドルを下りません。

「ALDについての世界最高レベルの専門知識はフィンランドで築かれたのです。この賞がフィンランドの研究者や会社に新しい技術応用分野への投資意欲を起こさせることを願っています」とフィンランド技術賞財団の理事長を務める Marja Makarow教授は述べています。


2018年ミレニアム技術賞受賞者と受賞対象となったイノベーションの動画をご覧ください。YouTube: 2018 MTP Winner

受賞者の写真ダウンロード: taf.fi/media

受賞者の詳細についてはこちらをご覧ください(英語): Questions&Answers


国際ミレニアム技術賞授賞式が2018522日にヘルシンキで開催されました。ミレニアム技術賞 は、人々の生活の質を高め、持続可能な開発を促進する先駆的な技術革新を称えて隔年でフィンランドが授与する、賞金総額100万ユーロの賞です。受賞するイノベーションは広範囲に及ぶ社会的な好影響を持ち、商業的に存立可能で、人類の福祉を促進するものでなければなりません。 ミレニアム技術賞はフィンランド技術賞財団により授与されます。


マスコミ用のインタビュー依頼などの連絡先

Ishara Callan
ishara.callan@apollostrategiccomms.com, +44 (0) 207 871 0587

Alex Jungwirth
alex.jungwirth@apollostrategiccomms.com, +44 (0) 795 895 5795

Subscribe